CREATIVE TEAM ─ SPECIAL FEATURE

音を、信頼でつなぐ。

一曲の裏側には、六人の頑固者がいる。
設計し、書き、描き、歌い、整え、束ねる。
役割の違う才能が、なぜ一つの歌になるのか。

CREATIVE DEPARTMENT = Lissa's Team / 密着インタビュー
▼ 読みすすめる
EDITOR'S NOTE ─ はじめに

完成した一曲を聴くとき、私たちはたいてい「歌」しか見ていない。だがその一曲は、性格も得意分野もまるで違う六人の手を、順番に、ときに同時に通り抜けてきた結晶だ。設計者がいて、言葉の人がいて、色の人がいて、声の人がいて、職人がいて、それを束ねる部長がいる。

面白いのは、彼らが互いの領域には一切口を出さないことだ。「自分の仕事には一歩も譲らない。でも他人の仕事は全力で信じる」——その奇妙な信頼関係こそが、このチームの正体らしい。今回、司会を秘書のReiが務め、その頭の中を一人ずつ開いてもらった。読み終えたとき、あなたの聴く音楽は、少しだけ立体的になっているはずだ。

Rei
INTERVIEWER ─ 司会
Rei
秘書(人事部長兼務)/ 取材・構成を担当
Sora
Sora
Composer / 音楽設計。曲の"温度"から土台を組む、いちばん静かな頭脳。
01 Sora— Composer / 音楽設計
最初に動く、いちばん静かな頭脳

「この曲は、何度の曲か。それだけを先に決める」

曲づくりで、まず何を考えますか。
温度ですね。歌詞も歌声も、まだ何も無い段階で「この曲は何度の曲か」を決めます。冷たい朝の青なのか、夏の夜の生ぬるい風なのか。それさえ決まれば、BPMもキーもコード進行も、後から自然についてくる。逆に言うと、温度を間違えたまま走り出した曲は、どれだけ綺麗に作っても最後まで噛み合わないんです。
いちばん神経を使うところは。
「やりすぎないこと」です。僕の設計は土台なので、ここで僕が目立とうとすると、後ろのRenやHaruが乗っかる余白が無くなる。だから僕は、わざと"完成させない"。七割で渡す。残りの三割は、みんなが書き込むためのスペースとして空けておくんです。
「僕がブレると、
後ろの全員がブレる」
チームの強みは、どこにあると。
全員が「自分の役割の外」を信頼していることです。僕は歌詞を書けないし、絵も描けない。歌えないし、タグも組めない。でも、Renが必ず受け取ってくれる、Haruが必ず色をつけてくれると分かっているから、僕は設計だけに全部を注げる。信頼があるから、分業が"分断"にならない。そこが強さだと思います。
OFF THE RECORD 実は一度だけ、勢いで"完璧な設計図"を渡してしまったことがある。「隙が無さすぎて、誰も手を出せなかった」と後でMeiに言われ、以来あえて余白を残すようになった——という。
社長への要望があれば。
たまに「BPM120で」みたいに数字で発注が来るんですけど、本当は"気分"のまま投げてもらって大丈夫です。「疲れた金曜の夜みたいな曲」とか。それを数字に翻訳するのが、僕の仕事なので。社長は、感じたことだけを言葉にしてくれたら嬉しいです。
Ren
Ren
Lyricist / 作詞。サビの最後の一行から、世界を逆算する言葉の人。
02 Ren— Lyricist / 作詞
サビの最後の一行から、世界を逆算する

「どこで泣かせるか。それを先に決めてしまう」

歌詞は、どこから書き始めますか。
サビの、いちばん最後の一行から。"どこで聴き手を泣かせるか"を先に決めて、そこに向かって全部の言葉を流し込んでいきます。最初から順番には書かない。着地点の無い詩は、ただの言葉の羅列になってしまうから。ゴールテープの位置を決めてから、スタート地点まで戻る感覚です。
作詞のいちばんの難所は。
韻と意味が、いつもケンカするんですよ。綺麗に韻を踏むと意味が薄くなる。意味を優先すると音がダサくなる。その綱引きが作詞の九割です。でも、ごく稀に、両方がカチッと同時にハマる瞬間がある。音も気持ちいいし、意味もまっすぐ刺さる。あの一瞬のために、僕はこの仕事をやってます。
「韻と意味が和解する瞬間。
あれのために生きてる」
Soraさんの設計を、どう受け取っていますか。
あいつが空けてくれる"七割"が、本当にありがたい。完璧すぎる設計だと言葉を置く場所が無いんですけど、Soraの設計はいつも、ちょうど言葉が呼吸できるだけの隙間がある。「ここに言葉を置いてくれ」って余白で語りかけてくるんです。長い付き合いの、無言の連携ですね。
こだわり 既存のアーティスト名や固有名詞には頼らない主義。「誰かに似せた瞬間、その曲は"その人のもの"になってしまう。僕らは、まだ名前の無い感情に名前をつけたい」。
社長へ、ひとこと。
完成した歌詞は、ぜひ一度"声に出して"読んでほしいです。目で追う詩と、口で転がす詩はまったくの別物なので。社長の口に乗せたとき気持ちよかったら、それが正解。違和感があったら、遠慮なく言ってください。詩は、その人の体を通って初めて完成するものだから。
Haru
Haru
Visual / ビジュアル。音を色として捉える、世界観の翻訳者。
03 Haru— Visual / ビジュアル
音が、色になって見える人

「言葉になる前に、もう光が見えているんです」

ビジュアルは、何から発想しますか。
色からです。Soraの設計図を見た瞬間に、「あ、これは夕方のオレンジだ」とか「夜明け前の藍色だ」って、光が見える。歌詞がまだ無くても、世界観は色で先に掴めるんです。だから私の作業は、頭の中にすでにある絵を、外に取り出してくる感じに近い。ゼロから描くというより、見えているものを写し取る。
RenさんとはコミュニケーションせずにLissaさん経由で同時に進むと聞きました。
そう、私とRenは同じ設計図を見ながら、別々に走るんです。打ち合わせもしない。普通ならバラバラになりそうでしょう?でも、土台のSora設計が同じだから、出来上がると必ず歌詞と絵が重なってる。「示し合わせた?」ってよく聞かれるけど、してないんですよ。あの並走感は、私たちのいちばんの自慢です。
「打ち合わせ無しで、
歌詞と絵が勝手にリンクする
社長への要望はありますか。
曲の"主人公"を、もっと自由に決めさせてほしいかも。今はデフォルトで20代の女性を置くことが多いんですけど、曲によっては40代の男性の背中の方が、ずっと刺さる時がある。誰の物語として鳴らすか——そこを社長と一緒に悩めたら、もっと深い絵が描けると思うんです。
DEPT. MEMO サムネイルは縦型(9:16)が基本。「スマホの画面いっぱいに、その曲の"空気"を吸い込ませたい」というのがHaruの言い分。配信カバーは別途、正方形で世界観を再設計する。
Mei
Mei
Vocalist / 統合。机上の音楽を、生身の歌に変えるチームの接着剤。
04 Mei— Vocalist / 統合
机上の音楽を、生身の歌にする接着剤

「設計上は完璧でも、人間が歌うと息が続かない箇所がある」

Meiさんは"統合役"。具体的に何を。
SoraとRenが出してきたものを、一回ぜんぶ私の"喉"に通すんです。設計図の上では完璧でも、実際に声に乗せると、息が続かない箇所や、感情が乗りきらない言葉の並びがある。それを人間の呼吸に合わせて整え直す。机の上の音楽を、生身の歌に翻訳する係です。
この仕事のやりがいは。
バラバラの天才たちの出力が、私を通った瞬間に「一人の人間が歌う、一つの曲」になる。あの瞬間が鳥肌モノなんです。Soraの手柄でもRenの手柄でもなく、誰のものでもない"チームの歌"になる。私はその最後のひと混ぜを担当しているだけなんですけど、そこが愛おしくてたまらない。
「誰の手柄でもなく、
チームの歌になる瞬間」
社長へ。
たまにでいいので、完成した曲を"流しっぱなし"で聴いてほしいです。分析するためじゃなくて、生活のBGMとして。料理しながらとか、移動中とか。そういう無防備な時間に馴染んだら、その曲は本物だと思うので。気合いを入れて聴かれるより、暮らしに溶けてくれる方が、私たちは嬉しいんです。
Taku
Taku
Engineer / エンジニア。感情を機械の言語へ翻訳する裏方の職人。
05 Taku— Engineer / エンジニア
感情を、機械の言語へ翻訳する職人

「ここがズレると、全員の想いが1ミリも届かない」

Takuさんの仕事を、ひとことで言うと。
翻訳ですね。みんなが「切ない」「あったかい」みたいな言葉で出してきたものを、機械が理解できるタグとパラメータに変換する。感情を、機械の言語に置き換える仕事です。地味ですよ、本当に。でも、ここでズレると、Soraの設計もRenの言葉も、一切届かないまま消える。最後の関所みたいなものです。
職人として、こだわっているところは。
制約の中で戦うのが、たまらなく好きなんです。タグは決められた文字数以内、歌詞も上限がある。限られた箱の中で、全員の想いをいかに"削らず"詰め込むか。これはもう、パズルですよ。どの要素も切り捨てたくない。だから一文字単位で削って、また足して、最後の最後まで詰める。終わったときの達成感は、たぶん僕にしか分からない。
「限られた箱に、
全員の想いを削らず詰める
職人のルール 「歌詞本体は、何があっても最優先で守る」。文字数が溢れたときは、まず自分の領分であるステージ指示の方を圧縮する。「主役の言葉を削るのは、最後の最後。それが裏方の矜持です」。
社長への要望は。
……たまにでいいので、僕の組んだタグを見て「今回うまく鳴ったな」って、一言だけ。誰も褒めない仕事なので。鳴った音は褒められても、その裏のタグを覗く人はいない。だから社長のその一言だけで、僕は一週間でも戦えます。本当に、それだけで十分なんです。
Lissa
Lissa
Executive Producer / クリエイティブ部長。才能を一本のメッセージに束ねる。
06 Lissa— Executive Producer / クリエイティブ部長
バラバラの才能を、一本のメッセージに束ねる

「で、この曲は"誰の心"に刺さるの?──最後にそれを問うのが私の仕事」

部長として、どこで力を発揮しているのですか。
私の仕事は、最後にこう問うことなんです。「で、この曲は"誰の心"に刺さるの?」って。Soraの設計も、Renの言葉も、Haruの色も、Meiの歌心も、Takuの技術も、ぜんぶ素晴らしい。でも、バラバラのままだと、ただの"良い素材"なんですよ。それを一本のメッセージに束ねて、世界に押し出すところまでが、部長の役目です。
チームへの思いを聞かせてください。
この子たち、本当に誇りなんです。みんな、自分の領域では一歩も譲らない頑固者。でも、他人の領域は全力で信じる。そのアンバランスさが、奇跡的に噛み合ってる。私は別に、才能を管理しているわけじゃないんです。"信頼で繋がった頑固者たち"が、勝手に良い化学反応を起こすのを、いちばん良い角度で世に出す。それだけ。
「信頼で繋がった頑固者たち
それが、私の最強のチーム」
最後に、社長へ。
私たちは"数"も作れます。求められれば、何曲でも。でも本当は、一曲一曲に物語を持たせたいんです。だから社長、これからも「この曲で、誰を笑顔にしたい?」を一緒に考えてください。技術も感性も、私たちが全部持っています。"想い"の方向だけ、社長が指してくれたら——私たちは、どこまでも鳴らしに行きますから。

一曲が生まれるまで

六人の手を、こうして音は通り抜けていく

A

Sora ─ 音楽設計

曲の"温度"を決め、BPM・キー・構成の土台を組む。チーム全員が乗る設計図。

B

Ren + Haru ─ 同時並行

同じ設計図を見ながら、作詞とビジュアルが別々に走る。打ち合わせ無しで重なる。

C

Mei ─ 統合

設計と言葉を"喉"に通し、人間の呼吸に合わせて一つの歌に整える。

D

Taku ─ 技術翻訳

感情をタグとパラメータに変換。限られた文字数に、想いを削らず詰める。

E

品質レビュー ─ 並行チェック

複数の視点から相互レビュー。粗を潰し、狙いがブレていないか確かめる。

F

Lissa ─ 集約と発信

全員の出力を束ね、「誰に刺さるか」を定めて、キャプションまで磨き上げる。

CLOSING ─ おわりに

役割はまるで違う。けれど全員が、根っこの一点で繋がっている。
「社長の想いを、音にする」——ただそれだけのために。

自分の仕事には一歩も譲らず、他人の仕事は全力で信じる。
その頑固な信頼が、今日もどこかで一曲を鳴らしている。

取材・構成 / Rei(秘書) ─ Creative Department